国土交通省 近畿地方整備局 京都国道事務所 様
【参加者の92%が普段行かない場所へ】AIスタンプラリーで実現する、京都の観光客分散化プロジェクト
長年「観光課題対策」という課題を抱えてきた京都。特定の時期・場所への集中は、慢性的な交通渋滞を引き起こし、市民生活にも影響を及ぼしています。
この構造的な課題に対し、国土交通省 京都国道事務所は、従来の「道路・車両」への対策に加え、「観光客の行動そのもの」を変えるという新たなソフト対策にも取り組みました。
その中核を担うのが、生成AIを活用したデジタルスタンプラリー「プラチナラリー」です。
人気IPとのコラボやAI写真判定といったゲーミフィケーションの力で、観光客を“楽しみながら”穴場エリアへ誘導。参加者の92%が「普段行かない場所へ行った」と回答しました。
本記事では、行政・観光協会・民間事業者が一体となって挑んだ、プラチナラリーを軸とした観光DXプロジェクトの戦略と成果、そして未来への展望をレポートします。
1. プロジェクト背景:訪れる「動機づけ」の強化
「車」への対策から「車と人の行動」への対策へ
京都国道事務所では平成29年度より「京都エリア観光渋滞対策実験協議会」を設立し、交通渋滞対策に取り組んできました。インバウンド需要の急回復を受け、道路側の対策だけではなく、観光客自身の行動に働きかける新たなアプローチを開始しました。

「混雑の見える化」から「人を動かす仕掛け」へ
2024年11月、協議会はデジタルマップ・プラットフォーム「プラチナマップ」を活用した京都観光デジタルマップ「Kyoto Smart Navi(通称:京スマ)」をリリースし、リアルタイム混雑状況や駐車場満空情報などの「見える化」基盤を整備。

デジタルマッププラットフォーム「プラチナマップ」を活用し、京都観光デジタルマップを構築(後にプラチナラリーとも連携)
さらにこのマップの利用促進を図るため、観光客が自ら進んで穴場エリアに足を運びたくなる「動機づけ」施策を行いました。

京スマを基盤とした観光混雑対策の全体像(国交省R7年度資料より)
京都観光デジタルマップ「京スマ」の情報統合プラットフォームとしての全容は、こちらの記事で詳しく解説しています。
2. 「プラチナラリー」の魅力
① AI写真判定が生む「ゲーミフィケーション」効果
従来のGPSやQRコードを使ったスタンプラリーだけでは、「現地に行ってスタンプを押すだけ」の作業になりがちで、強い誘引力にはなりにくいという懸念がありました。今回の目的は参加者が「普段行かない場所へ行ってもらう」ことです。今まで行ったことのない場所へ足を運んでもらうためには、強力な動機づけが必要です。
プラチナラリーに搭載された「AI写真判定機能」は、「現地で特定の被写体を探し、撮影する」という能動的なアクションをユーザーに求めます。
・「このアングルで写真を撮ると認定される」
・「このアングルで写真を撮ると認定される」
こうしたゲーム性が、「せっかく来たから写真を撮ろう」「次のスポットも行ってみたい」というモチベーションを生み出し、自然な回遊を促します。

スタンプ獲得方式:AI写真判定の仕組み
② 施設側の運用負荷ゼロ
AI写真判定は、施設側にとっても大きなメリットがあります。従来のスタンプラリーでは各スポットにQRコードやスタンプ台の設置・管理が必要でしたが、AI判定であれば現地の風景や建造物そのものが「スタンプ」になるため、施設側の設置・管理の手間が一切不要。行政主導の大規模施策において、この運用上のメリットは極めて大きく評価されました。
③ マップとラリーのシームレスな統合
プラチナラリーは、プラチナマップ上で構築したデジタルマップ上でそのまま利用可能なため、別々のサービスを立ち上げる必要がなく、一つの画面上にシームレスに統合されています。スタンプラリーに参加しながら、混雑状況やトイレ・駐車場の情報もそのまま確認できるため、「ラリーのためだけのサービス」ではなく、観光中ずっと使い続けてもらえる設計になっています。
3. 施策詳細:AIスタンプラリーによる段階的な「普段行かない場所への誘導」アプローチ
プロジェクトは、ターゲットや目的に応じた高度な「普段行かない場所への誘導」施策として展開されました。
Phase 1:「場所の分散」― 穴場スポットへの誘導
企画名:ルパン一味を集結させよ 京盗スタンプラリー(南座公演 歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』コラボ)
南座公演 歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』とのコラボレーションにより、スタンプラリーそのものの集客力を高めつつ、獲得条件として、
•「仁和寺の北庭から五重塔を撮影せよ」
•「指定のスイーツと一緒に写真を撮れ」
といったミッションに対し、ユーザーが撮影した写真をAIが即座に判定。単に現地に行くだけでなく、「体験」そのものを楽しむ要素を取り入れました。

ルパンスタンプラリーの画面設計
©モンキー・パンチ ©松竹 ©モンキー・パンチ/TMS・NTV
スポットは、清水寺や金閣寺といった定番エリアに加え、山科や大原などの穴場エリアにAI判定スポットを配置。スタンプ獲得のために自然と足を運ぶ動線を設計しました。

ルパンスタンプラリーのスポット設計
Phase 2:「時間の分散」― ポイント変動で混雑ピークを平準化
企画名:ポイントラリーで巡る 秋の京都 スマートさんぽ
(開催期間:2025年11月20日~12月22日)
ルパンスタンプラリーでの成功をもとに、次は紅葉シーズンの混雑対策として、新たに「時間帯によるポイント変動機能」を実装したスタンプラリーを開催。

「秋の京都 スマートさんぽ」の画面設計
早朝や夕方以降など、比較的空いている時間帯に来訪すると獲得ポイントがアップする仕組みを導入しました。「場所」だけでなく「時間」の分散も促すことで、ピークタイムの平準化を図りました。また、パーク&ライド駐車場をスポットに設定し、マイカーから公共交通への乗り換えも促進しました。

「秋の京都 スマートさんぽ」の施策目的と時間分散の仕組み
4. 導入成果:参加者の92%が「普段行かない場所」へ
初のAIスタンプラリー開催の試みとなった「ルパン一味を集結させよ 京盗スタンプラリー」では、当初目標500名を大きく上回る781名が参加。さらに、スタンプラリー開催を機に「京スマ」全体のPV数も約1.6倍に増加し、プラットフォームの認知拡大に大きく貢献しました。
定量的な成果
• 新規層の開拓:抽選応募者の約9割が「今回初めて京スマを知った」と回答。
• 高い満足度:参加者の91%が「満足・やや満足」と回答(平均満足度4.47)。
• 「普段行かない場所」へ:アンケート回答者の92%が「普段行かないエリア・スポットに行った」と回答
• 公共交通機関の利用促進:移動手段として電車(73%)やバス(54%)の利用が多く、公共交通へのシフトを確認
定性的な評価
参加者からは「スタンプラリーがなければ行かなかった場所へ行くきっかけになった」「週末でも混雑を避けられた」「AI判定で写真を撮るのが楽しかった」といった声が多数寄せられました。
「観光」と「ゲーム」の相性の良さが実証され、楽しみながら自然と混雑を回避し、「普段行かない場所への誘導」に成功しました。また、事業者様からも「ラリーをきっかけに来店が増えた」と好評をいただいています。
5. 今後の展望:データに基づく持続可能な観光施策へ
今回の取り組みを通じて、デジタルスタンプラリーが単なるイベントツールではなく、「観光課題解決のためのソリューション」として機能することが実証されました。
ダッシュボードで収集された人流データや属性データは、今後の施策立案や広告配信の最適化に活用されます。

参加者の属性を詳細に把握

時間帯別の行動を把握

プライバシーに配慮しながらも、ユーザー別の行動を把握
京スマの情報統合プラットフォームとしての全容(IoT連携、API連携、手ぶら観光など)は、 こちらの記事をご覧ください。
国土交通省 近畿地方整備局 京都国道事務所 様
京都府域における国道の整備・維持管理を担う国土交通省の地方機関。2018年、観光地の慢性的な交通渋滞の解消に向け、ICT・AIを活用したエリア観光渋滞対策の実験・実装を推進する「京都エリア観光渋滞対策実験協議会」を設立(事務局)。京都市・京都府・京都府警察・観光事業者・学識経験者等と連携し、従来の道路・車両への対策に加え、観光客の行動変容を促すソフト対策にも取り組んでいる。2024年11月には観光情報プラットフォーム「京都観光デジタルマップ Kyoto Smart Navi(京スマ)」を開設し、混雑カメラ・駐車場満空情報・手ぶら観光サービス・観光バス駐車場予約等の機能をワンストップで提供。
https://www.kkr.mlit.go.jp/kyoto/


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